沖縄に「金城さん」が多いワケ
「金城」という名字
沖縄で「金城さん」と言えば、学校のクラスに3人以上いる名字。「比嘉さん」に次いで2番目に多い名字となっています。
「金城」という名字は「キンジョウ」「カナグスク」「カネシロ」「カナシロ」
がいますが、圧倒的に「キンジョウ」が多いですよね。
何か特別な理由でもあるのでしょうか。
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「キンジョウ」の由来
沖縄には「玉城(たまぐすく)」「中城(なかぐすく)」「豊見城(とみぐすく)」など沢山の「~城(~ぐすく)」と言う地名があり、それにちなんだ苗字が残っています。
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金城の呼び方も本来は「カネ(ナ)グスク」でした。
「キンジョウ」と呼ぶ人は100年以上前までほとんどいなかったのです。
では一体「金城さん」に何が起きたのでしょうか。
結論から言うと、この現象について実はまだ解明されていません。
これからの話は研究者が現存する資料から考察したものです。
「金城さん」の歴史を紐解いていきたいと思います。
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名字の「読み替え」
「キンジョウ」がもともと「カネ(ナ)グスク」だったように、
同じ漢字でも読み方が違う名字がいくつも存在します。
名字の歴史については複雑な過去があり詳細は別で話す事にしますが、
「改姓改名運動」といわれた名字の「読み替え」が行われてきた背景があります。
1つの要因として、沖縄独特の名字が本土に出稼ぎに行く際に差別や偏見の対象になったことが「読み替え」を引き起こしたと言われています。
「キンジョウ」になるまで
沖縄の新聞にフリガナが確認できるのは1906年(明治39年)からです。
当時新聞には「金城」に「カネ(ナ)グスク」といったフリガナが付いていました。
1925年(大正14年)、新聞に「カナシロ」という振り仮名が確認されます。
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昭和に入ると「城」という文字の付いた名字に「金城(カナ)「玉城(タマ)」「大城(オオ)」と振り仮名がふられ、名字の読み方がわからなくなりました。
恐らくこのころから「グスク」から「シロ」への読み替えが広がったと専門家は推測します。
戦前に沖縄で発行された名簿からは「金城」はまだ「カ」に分類されています。
しかし、すでに昭和初期の呼称統一調査会では「キンジョウ」という読み方を薦めていたそうです。
「キンジョウ」はもともと存在した?
沖縄にはもともと「キンジョウ」という読み方は存在しなかったのでしょうか。
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現在資料から確認できる最も古い「キンジョウ」は、新聞に投稿された1912年10月7日の「読み替え」反対派による投稿記事とされています。
また、1945年(昭和20年)に米兵が金武町で撮影した理髪師の男性の名が「Kin-jo」であったという記録があるそうです。
いずれにせよ、現存する資料の少なさから「キンジョウ」はかなり少数はであったと考えられています。
1945年、戦争が終了した時点では大きな変化はなかったようです。
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そして1950年。沖縄で発行された名簿に驚くべき変化が見られます。
これまで「カ」に分類されていた「金城」が「キ」に分類されるようになりました。
この5年の間に「金城」という苗字を
「キンジョウ」と読むことが一般常識となったことを示しています。
戦後5年間の資料はほとんど残っていません。
これが「キンジョウ」さんの改名現象が解明されていない理由なのです。
カギは県外のウチナーンチュ
県外にいる沖縄出身の人々からヒントが得られます。
大阪では「金城」は「カ」に分類されていることから「カナシロ」「カネシロ」という読み方が一般的であったと考えられます。
一方、東京では「キ」に分類され、「キンジョウ」と読み替えされているという1920年以降の資料が発見されました。
ちなみに、海外へ移民したウチナーンチュも少なくなかった時代。
ハワイでは、「カネシロ」「カナシロ」の名前が戦前の資料に記録されおり、「キンジョウ」は見当たらなかったそうです。
専門家の推測は2つあります。
まず1つ目ですが、役所が改名に一役買ったかもしれないということです。
「カニグスク」姓の子孫の話によると
戦後、戸籍登録の際に役所に「キンジョウ」と申請されたそうです。
それ以降「キンジョウ」と名乗るようになったんだとか。
2つ目は、沖縄に帰省した県出身者の「キンジョウ」が
その呼び名を持って帰ってきたことです。
東京周辺や軍隊では「キンジョウ」に読み替えした人
(もしくは呼ばれていた人)が多かったため、
都会らしくかっこいい苗字「キンジョウ」が
爆発的に広まったのではないかと推測されています。
「キンジョウ」が広まったのはほんの60年前の出来事だったんですね。
首里の城下町「金城町」はどっち?
観光地としても有名な首里の石畳。
首里城に続く城下町からの道として金城町にあります。
Photo by k-kabegami
今ではすっかり「キンジョウ町」と呼んでいるのですが、
実は、半世紀以上前まで「カナグス(シ)ク町」だったのです。
戦後に大量発生した「キンジョウ」が原因で地名をめぐって事件が勃発しました。
事件のキッカケは、NHK沖縄放送局から那覇市役所宛に入った1件の問い合わせ。
「金城町は「カナグシク石畳」と呼んでいるが、バス停には「KINJHO」と表示している。一体どっちが正しいのか。」
本来は「カナグシク」ですが、これについていろいろ審議が行われました。
そして「カナグシク」派と「キンジョウ」派にわかれます。
3年半に及ぶ審議の結果、多数決で「キンジョウ」13票、「かなぐしく」5票となり、「キンジョウ町」が誕生することになったのです。
Photo by Gettyimages
沖縄の苗字がたどってきた数奇な運命。
まさか地名まで影響されるとは誰が思ったでしょうか。
こういった事例は珍しくないのも事実です。

あなたの隣人の「金城さん」。なんて読む?
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